“門外不出!!”-2度目の所蔵!!-遺失した絶版・蔵書!!-“三好徹”著作-“三億円事件の謎”(1980年)(文春文庫) 希少本-再び!!

2022年の冬。

私は1冊の
数十年と大事にしてきた
蔵書を"遺失"してしまった。

表紙は
自宅に保管し、
黒の本革の
カバーに被せ、

暫くの間、
鞄に忍ばせては、
外出先の病院の待合室等で
何度もその書を通読し
メモを取り続けていた。

本書には・・
ある映画作品
(北野武監督の"HANA-BI")に
たいするひとつの
回答を希求していた
から、であった。

突然ふと
大事なものを
失ったことに気が付き、
慌てふためき自家用車の中を
ひたすら探したものの
どうしても見つからず、

ため息をつき、
"遺失物"として
問い合わせた
医療機関だけで
およそ・・9件。

思いつく駅(鉄道会社)にも
手当たり次第に問い合わせたものの、
結局"本著"の"拾得物"は
"零"件となり果てた。

なんとなく、
警察には、
届け出できなかった。

文庫本という手軽さ所以に
暫くの期間、手提げ鞄の中で
携帯していたのは安易だった。

私は、
後悔の念に
囚われた。

本書籍は
今からおそよ54年前、
1968年12月10日午前9時44分、

東京都府中市にて金融機関の
現金輸送車に積まれた
約3億円の現金(現在では
数十億円相当とされる)が
白バイ警察官に扮した男に
奪われた窃盗事件に関する
"ノンフィクション・ノベル"
である。

本書は国内最大級の
未解決事件ならびに
現金強奪事件のルポ
(当時の現場からの声)である。

つまり日本人なら誰もが
知るあの"三億円事件"の
総括的な極めて希少と謂える
既に絶版となってしまった書籍だ。

本事件が
1975年(昭和50年)12月10日
の刑事訴訟法250条に於ける
公訴時効が成立してからおよそ5年後、
そして除斥期間の経過による
損害賠償請求権の消滅まで(1988年12月10日)までの
8年前に出版された書籍となる。

私は捜査機関や
プロのライターではないが、
"三億円事件"を
個人的に細々と
研究してきた・・
所謂"マニア"なの
かもしれない。

事件ののち
半世紀もの間、
"三億円事件"はまさに
百花繚乱に、
そして豪華絢爛に、
あらゆるメディアで取り上げられ、
多くの名男優や魅力ある女優たちが
演じドラマ化、
映画化され、
漫画を含めた
ありとあらゆる類いの
文芸書が数多く誕生した。

私は総てを
網羅し尽くしている
"輩"ではないにせよ、
唯一無二の
"三億円事件"を
総括した傑出した
作品="逸品"を
ひとつだけ
あげろ!と誰かに
尋ねられたならば・・

一縷も迷わず私は、
"三好 徹"(みよしとおる)氏著作の
本書である【三億円事件の謎】
(1980年) (文春文庫) 文庫
をあげるだろう。

この書籍は、
つい最近まで
異常とも謂える
絶版本の市場価格と
なってしまっていた。

時に1980年の定価(時価)340円の
文庫が1万円を超えることも珍しくなく、
かつ2万円を超えて売買される
ケースすらあった。

明らかに"異常"と判断出来る
"訴求力"である。

"蔵書"を紛失(遺失)した
私は落胆し、
咄嗟に思いついたのは
既に会員となり、
個人的に活用している
"国立図書館"での
複写サービスの
提供(遠隔複写)を考慮した。

総ての出版物を
保有すると"豪語"する
"国立図書館"。

原著のコピーとなれば
ひとによる
手作業となり、
"用紙サイズに応じた
料金単価(税抜)×枚数の合計
並びに発送事務手数料が生じる。

職業(プロ)としての
編集企画での大きな
予算(バジェット)では
効率を含め大量の情報入手には
このようなサービスは
適しているものと謂えるが、

やはりプライベートとなると
ハードル="敷居が高い"。
ピンポイント的にそうした
国のサービルを受けることは
得難い魅力だが、書籍総ての
頁を複写依頼、
となると尻込み
してしまう。

いくら高値とは謂え、
"懐"次第では原著が
買えない値段ではない場合、
書籍を再び直接購入した場合が
結局は"得"=よかったりもする。

本書籍の希少本に関しては
ようやく相場が安定しているのを
見計らって
再び購入することとなった。

手元に届いた書籍は
恐ろしい程に折り目
も皆無の
極めて保存状態の
良い"代物"だった。

なにやら
"得体の知れない
オーラのような?・・
"感慨"を書籍から受けた。

私の遺失した
本書に話を戻せば、

間違いなく
イヌが咥えていった
ことなどなく、
あきらかに"誰か"が
私の"遺失物"=本を拾ったわけだ。

本皮の黒カバーがなければ、
直ぐさまにゴミ処理されても
おかしくはなかった。

小雨降りしきる
古本屋の脇を通り過ぎれば、
ワゴンに放置された
安くしても売れない文庫が
湿った空気を吸いながら
雑紙として
処分されるのを待っている。

"文庫本"という
装丁ものの殆どは
そういった
"ぞんざいな扱い"
を受けてしまいがちだ。

以前から
所有していた
"本書"においては
大事に保管して
いたにも関わらず、
紙は酷く黄ばんでいた。

しかし、
おそらく"遺失"物は
棄てられることはなかっただろう。

拾得者(落とし物を拾った方)は
うら若い女性だったかもしれない。

読書家の・・
中年男性だったかもしれない。

いずれにせよ、
その"拾得物"を得た際、
きっとなにげなく、
モバイル等で本書のタイトルでも
軽い気持ちで打ち、
Web"検索"を行ったかもしれない。

今から43年もの昔に発行された、
それは黄ばんだカバーすらない
そんな文庫本が
とんでもない高値で
売買されている事実に
驚かれたかもしれない。

そして
読書慣れしている方も、
そうでない方も、
本書にひとまずは
目を通しただろう。

そして・・
この
活字から、
強い衝撃を
受けるであろう。

"三好 徹"氏の
なめらかな(流暢な)文章、
そこには気取りも
小難しさや冗長さとは、
無縁である。

あの"チェ・ゲバラ伝"の
著者でもある。

私はずっと日本の
ジャーナリストである
"三好 徹"氏=2021年4月3日(90歳没)を
心から高く評価している者のひとりだ。

あの事件(三億円事件)の詳細を
まるで知らぬ若い世代の方も、
そうでない方も、
本書に触れ、
きっと"目眩"を
覚えるかもしれない。

あの事件(三億円事件)の詳細、
つまり日本国内で実際に起きた、
"ピカレスク・ロマン"が
本書の随所に窮極な姿で
露わに描写されてゆく。

あの事件の実行犯。

降りしきる雨中、
細面の美男子が
卓越した運転技術で
走行車に鋭い
停止命令を下し、
つまり現金輸送車を
奪った"フェイク・トリック"
を施した"白バイ警官"。

様々な焦りや動揺は、
持ち前の"度胸"で
世紀の語り継がれてゆく"劇場型”
犯罪のプロトタイプを
僅か3分以内に完遂してしまった。

そしてもうひとりの
"真"犯人。

数々の遺留品の中で
"ハンチング帽"を捜査員が
廻しかぶってしまったことなど
失笑する場面が本書では随所に
描かれる。

21世紀現代の初動捜査でそんな
失態はあり得ないと"昭和"を強く
感じながら、半世紀以上前の
ノスタルジックな時代に没入してゆく。

"ダイナマイト発煙"を
喚起連想させた"フェイク"として
利用した犯人遺留品の
極めて重要視された
改造型発煙筒。

改造品の発煙筒の筒の加工の
内部面から浮かび上がった、
雑誌"電波科学"(1968年刊行7月号)の
"東芝12CP形"テレビの詳細な回路図を
垣間見た捜査員達・・・。
(本書籍ではここまで
詳細は述べてはいないがその
状況を伝えている)

ついに
"ホシ"を掴んだ!!と捜査員達に
武者震いを通り越す程の衝撃が
あったことを想像するだけでも
"事実は小説よりも奇なり"の
バイロンの言葉を
想起するまでもなく、
"時効"を知ってしまっている
今を生きる我々にとっては
ある意味"高みの見物"として
過去のそんなリアルな事実は
滑稽であったり"痛快"でもある。

そのようにして、
あの事件の真犯人が
"只者"でなことを
あますことなく
本書は捉えて離さず、
描写し尽くす。

そして
犯人の空恐ろしい
実人物像。つまりその
真骨頂が露呈されてゆくのだ。

あの20世紀を代表する
「昭和の名刑事」の異名を持った
平塚(八兵衛)=本書では
実名を誇張しない、が
何故ゆえに単独犯説に
固執したのか?

何か・・がおかしい。
(平塚のリークが発端となって
誤認逮捕=三億円別件逮捕事件を生じさせ、
後に被疑者とされた男性は2020年に自殺した)

そもそも
平塚の真の実力を
いかんなく発揮した
栄誉とは"ころし"=殺人事件の
"おとし"=犯人"自白"(自供)では
なかったか?

三億円事件は・・
完全""無血""の
犯罪であった。

その深き謎の"テーゼ"
が本書の後半を貫通し続け
読者に訴求される。

本書籍は連載という形式で
当時文字数制限があった筈である。

事件真相に関しては
無論、
完璧ではないが、
例えば、
本書よりは遙かに
入手し易い参考書としては、
比較的近年出版された
"一橋文哉氏"著書の
"三億円事件" (新潮文庫)
の前半との併用だけでも
かなりの
しっかりした情報に
肉迫でき得るかと思う。

平塚の"三億円事件"の
独白ヶ所のある書籍も
また何かのヒントを得るだろう。
※刑事一代―平塚八兵衛の昭和事件史(新潮文庫)文庫?2004/11/28
佐々木 嘉信 (著), 産経新聞社 (編集),
サンケイ新聞社= (編集), 産経新聞= (編集)
は比較的入手し易く推薦。
※ 但し以下、
【三億円強奪事件―ホシを追いつづけた七年間の捜査メモ (1975年)エコーブックス】や

【3億円事件ホシはこんなやつだ (1975年) (Challenge book)】


単行本のこれら絶版書籍の入手は極めて難しい。

しかしながら本書も
不思議な類いな
書籍である。

版権だのロイアリティだのと、
色々と諸般の事情がある
かと察するが、
これだけの名著が何故
ハードカバーにならず、
文庫のみ、なのだ!?

本書を失くし、
そしてこうして再び、
再会出来たことで、
遺失してしまった件に関しては
今は後悔していない。

きっと誰かが
偶然この書に
出逢い、
それなりにこの書籍に
繰り広げられた"世界"を
楽しんで頂けたら
それで本望である。

余談になるが、
本書を再購入し
手元にあるこの書籍に触れ、
改めてとても
大事なことを感じ得た。

蔵書とは果たしてどういう存在なのか?
私なりに、ではあるが、
改めて認識することとなった。

"三好 徹"著、
"三億円事件の謎"(1980年)
(文春文庫)。

2023年5月・・。
再び本書を所有。

本書を"門外不出"とした。

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